大阪の解放出版社が発行している月刊誌『部落解放』に、ずいぶん長い間、私は「東京音楽通信」という連載ページを書かせてもらっている。
この月刊誌は、題名を呼んでそのまんまの、とても真摯な内容がほとんどだが、その中で音楽にまつわることなら何でもいいと言われて始めた異色の連載だった。
毎回私のようなテキトーな男の原稿でいいのだろうか? と思って書いているのだが、各地で色んな方が呼んでくださっているようで、そのお蔭で今も続いているのである。
『セックス・マシーンで踊りたかった 東京音楽通信1』は、一九九九年十一月から二〇〇二年二月までの原稿が中心となっている。
加えて『Free & Easy』誌に書いたジェイムズ・ブラウンものを巻頭に置いた。
この音楽がいい、この音楽は嫌い!と好き勝手に言い合うのが私たち音楽バカの愉しみではあるが、そんな日頃の音との交際から、あぁそう言えば歌と社会とはこのように結びついている、とか、人間って本当に俗っぽいアニマルだな、とか、音楽から読み取れることが多々ある。『セックス・マシーンで踊りたかった』は、ジャンルはまったくバラバラだが、何とはなしにゆるやかな流れが読み取れるのは、かよう音楽を通じて著者が「人間」を見よう語ろうとしているからなのだろう。
今回の『1』における流れの一つが「戦争」であろう。
これは著者自身が意識したわけではない。だが、「9・11」同時多発テロ以前から、私だけでなくみんなが「戦争濃度」の高まりを肌で感じていた。きっとそれが反映されているのだと私は思う。私はそれに、ちょっとゾッとした。
(文・藤田正)
<もくじ>
セックス・マシーンで踊りたかった/若松若太夫、ディープ・ブルースの心/もしも、ぼくが大統領になったら/島唄の神様はパチンコ通いの大酒飲み/リストラの嵐の中で、照屋林賢走る/上々颱風は日本のニュー放浪芸/ザ・セックス・イズ…平井堅のエロス/沖縄サミットとウチナーンチュの熱気/清志郎、パンクで歌え「キミがよー」/インターネット・ラジオへようこそ/変わらぬあの衝撃…ジョン・レノンの魂/子が母に抱かれるような救い…古謝美佐子/封印は解けた?「フォークの神」の今/被差別部落をつなぐ「子守り唄ネット」/二つの「竹田の子守唄」が故郷で出会う/はてしない草原に響くモンゴルの歌声/戦争を憎む…坂本龍一と登川誠仁/海がつなぐアフリカとアジア、歌の円環/アイヌの歌が聞こえる。ひたひたひた。/戦禍の町に鳴り響く二村英仁のバイオリン/小沢昭一が歌う過激な童謡、反逆の唱歌/モンゴル800+戦争+同時多発テロ/「竹田のこいこい節」、そしてエミネム/映画『カンダハール』と戦意高揚ロック/美川憲一はサソリ座、ワタシは乙女座