ボブ・マーリーは、レゲエを代表するシンガー/ソングライターです。
エルビス・プレスリーやジョン・レノンなどと同じように、マーリーは、音楽を通じて世界の人々に生きることの大切さを教えた人物です。
彼については、何度も書いてきました。彼が中心となったザ・ウェイラーズが『キャッチ・ア・ファイア』を出した頃は、なんだかヘンな音楽だね、などと友人と話していたことを思い出します。ヘンだけど、わけもわからず引き込まれていました。マーリーさんとは、それ以来の「付き合い」です。
それがレゲエとの出会いでもあったわけです。
同じ頃、エリック・クラプトンがマーリーの歌をカバーしました。それが「アイ・ショット・ザ・シェリフ」。しかしこの歌、もともとは「オレはポリスを撃った」という題名だったと知って、えらい男が出てきたもんだと思いました。
不思議なリズムに不思議な言葉。加えてラスタファリアニズムという、不思議な宗教運動も知るようになりました。
レゲエがだんだん広まって、大きなブームになり始めていた1979年、ザ・ウェイラーズは日本へやってきました。このライブを(たとえ観なくても)、同時代的に知っている人が日本の「レゲエ・ファン第一世代」だと思います。私もその一人です。
ボブ・マーリーは、この来日のすぐ後に亡くなってしまいますが、あのホットだった時代を一度まとめてみようというのがこの『ボブ・マーリーの一生』です。
たった三六年間の短い人生でしたが、その生から死に至るまで彼は疾走し、あっという間もなく我々の視界から消えたのだな、と改めて思いました。
その疾走ぶりを、彼のヒット曲や、いろいろな出来事をまじえて語りました。
歌手としての人生の中核に「黒人の解放」というテーマがあった人だけに、ついつい重くなってしまうボブ・マーリー・ストーリーですが、分かりやすく、今回は「軽く」書いてみようと思いました。はたして……
<本書の構成>
1 サウンド・オブ・キングストン: 黒人の母と白人の父の間に産まれたマーリー。小さい頃から歌が好きで、頭のいい子でした。キングストンで母と二人暮しを始めます。
2 スカの時代とザ・ウェイラーズ: ジャマイカン・ポップが活況を呈してきた60年代、ザ・ウェイラーズの時代は目前に迫っていました。
3 レゲエ・レボリューション: レゲエ・ヒーローの誕生です。マーリーとザ・ウェイラーズがレゲエを世界へ導いていきました。
4 ラスト・デイズ: 人気シンガーというだけでなく、黒人社会や抑圧された人たちの代弁者だとも言われたマーリー。死が近づいていました。
5 スカからルーツ・レゲエの三十年: マーリーが生きた50年代から70年代のジャマイカ音楽とラスタなどの文化を、テーマ別にまとめました。
6 今なら特別付録として「ボブ・マーリー来日公演顛末記」も読むことができます。入国はできないだろうと言われていたザ・ウェイラーズ一行の秘話を取材したものです。
(文・藤田正)